賃上げ支援助成金パッケージ徹底解剖:2025年度の3本柱活用法

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 2025年度は、中小企業・小規模事業者を中心に「賃上げ」「待遇改善」「人材育成」という3方向から支援を強化する年となっており、それぞれの制度が要件・助成率・対象範囲ともに見直しを受けています。これらを“3本柱”として捉え、順次・組み合わせて活用することで、より効果的な賃上げ・処遇改善の戦略を立てることができます。

第1の柱:業務改善助成金 〜最低賃金引上げ+設備・効率化で賃上げ基盤を整える〜

  • 対象事業者: 中小企業・小規模事業者であって、かつ「みなし大企業」とされる企業との関係を持たないこと。
  • 事業場ごとに「事業場内最低賃金」と「地域別最低賃金」との差額が50円以内であること。
    ※<9月5日から事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金額未満である事業所>に拡充
  • 雇入後6か月以上の労働者を対象に、事業場内最低賃金を引き上げること。 ※令和7年度は3か月→6か月へ延長。
  • 賃金引上げ額:例えば「事業場内最低時給を30円以上引き上げる」ことなどが目安。
  • 助成対象経費:生産性向上・労働能率増進に資する設備投資等。
  • 助成率・上限等:令和7年度では、引き上げ前の最低賃金額により助成率が異なり、一般的には75 %(=3/4)を標準とし、賃金が低めの事業場では80 %(=4/5)など高めの助成率になる場合あり。
  • 申請の時期・期間:年度内に申請・賃金引上げ実施を行う必要。事業完了期限:令和8年1月31日
  • 賃上げを「設備投資・効率化+時給底上げ」という組み合わせで行うことで、制度の要件を満たしやすくなります。「ただ時給を上げる」だけでは不十分で、「業務改善」の取組みを明確にしておくことがカギです。
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金との差額条件(50円以内)がありますので、対象事業場の賃金水準を事前に確認しておくことが重要です。
  • 助成率が高めに設定されているため、賃金引上げ額を適切に設定し、設備投資とのセットにすることで、一件あたりの支援額を拡大できます。
  • 他の柱(キャリアアップ・人材開発)と併用することで、賃上げだけでなく「処遇改善」「育成→賃上げ」の流れをつくると、社内制度としても説得力が増します。

第2の柱:キャリアアップ助成金 〜非正規→正規/処遇改善で賃金底上げ・待遇改善〜

  • 【対象事業主・企業側の条件(共通)として】
  • 雇用保険適用事業所であること。
  • 対象となるコース実施日前に「キャリアアップ計画」を作成・提出していること。
  • 【対象労働者の要件例(正社員化コース)として】
  • 有期雇用労働者等を正社員化または直接雇用すること。
  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者、または雇入れから3年未満で「過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下」「過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない」などの条件に該当する労働者を優先対象とする「重点支援対象者」の設定あり。
  • 新規学卒者については、入社から1年未満のタイミングでの正社員転換は対象外となるなどの変更あり。
  • 【賃金等の引上げ条件】
  • 正社員転換前6ヶ月の賃金と、転換後6ヶ月の賃金が「3%以上増額」されていること。
  • その他、就業規則・雇用区分規定などの体制整備が求められます。たとえば「正社員制度」「雇用区分の明記」「賃金規定・計算方法の明示」など。
  • 支給額は中小企業の場合、例えば有期→正規コースで1人あたり 80万円(重点支援対象者)などが掲げられています。
  • 「非正規社員の正社員化」という処遇改善を行うことで、賃金底上げ+安定雇用というダブルの効果が期待できます。ただし、制度要件が厳格になっています。特に「正社員化後6か月間の賃金が3%以上増額」「入社1年未満の新卒者の早期正社員化は対象外」など、計画段階で対象者を見極める必要があります。
  • 社内規程(就業規則・賃金計算規定)を整備していない場合は先に制度整備を行ってから取組を進めるほうが安全です。
  • 他の助成金(業務改善・人材開発)と併用し、例えば「設備投資+効率化(第1柱)」「正社員化+賃金引上げ(第2柱)」「教育訓練+スキルアップ+昇給(第3柱)」という戦略を構築することで、企業としてのストーリーが明確になり、助成金申請が通りやすくなります。
  • 助成金をもらうためだけではなく、「社内制度としての定着化」を意識することで、賃上げの意味が社内にも伝わりやすくなります。

第3の柱:人材開発支援助成金 〜教育・訓練を通じて賃上げ・定着・スキルアップを実現〜

  • 事業主が自社労働者に対して、職務に関連した専門的知識・技能を習得させるための職業訓練等を、計画に沿って実施した場合に、訓練経費および賃金(訓練中含む)などを助成。
  • 主な変更点(令和7年度改正)として、訓練実施のみの経費助成率が60%→70%、有期契約労働者等を対象とした賃上げ要件達成時には75%→85%へ引き上げ。
  • 「有期実習型訓練(有期契約労働者等を正社員化を前提とした訓練)」においては、原則として訓練修了後に対象者を正社員に転換することが支給要件とされた。
  • 申請手続き:訓練開始日の 1か月前まで に計画届を提出、訓練終了後2か月以内に支給申請を行うなど、事前手続き・スケジュール管理が重要。
  • 単に研修を実施という形だけでなく、「研修後に昇給・正社員転換を行う」という流れを制度設計しておくことで、賃上げの根拠および定着支援の観点から強みを持てます。
  • 「有期契約者を正社員化」というフローを前提に訓練を設計できる場合、処遇改善・スキルアップ・賃上げの三位一体が実現できます。
  • 訓練計画・書類手続きの準備(計画届など)を「訓練開始前」にきちんとしておくことで、申請がスムーズになります。開始後では対象外となるケースもあります。
  • 他の助成金(第1柱・第2柱)と組み込むことで、設備・効率化+処遇改善+人材育成という一貫した賃上げストーリーを社内・外部に示すことができ、助成金申請時の説明力も高まります。
  • 賃金助成率が高めに設定されているので、訓練実施コストを軽減しつつ、人材育成を実質的に進めることができます。

3本柱をどう組み合わせるべきか? 〈2025年度版・活用戦略〉

1.基盤整備フェーズ(第1柱)
 まずは、事業場内最低賃金の引上げ+設備投資・効率化という形で、賃上げ・処遇改善の“土台”を築きます。
 →「時給を30円以上上げる+効率化設備の導入」などが典型。

2.処遇改善・正社員化フェーズ(第2柱)
 非正規社員を正社員化、または処遇改善(賃金規定改定など)を行うことで、賃金底上げと安定雇用を実現します。
 →条件として「正社員転換後6か月の賃金が転換前6か月より3%以上増加」などがあります。

3.育成・定着フェーズ(第3柱)
 人材育成を通じてスキルアップを促し、その結果として昇給・転換・定着を図ります。
 →「訓練実施+訓練後正社員化(有期実習型訓練)+賃上げ要件」など。

4.ストーリー設計が鍵
 各柱の取組をバラバラに実施しても効果は出ますが、「設備投資 →処遇改善 →人材育成・賃上げ」という流れ」で施策を設計すると、社内外(社員・労働局など)に“なぜ賃上げを実施したのか”“その根拠・仕組み”が明確になり、助成金申請上も説得力が増します。

5.タイミング・スケジュール管理が重要
 申請前準備、計画届提出、賃金引上げ実施、設備投資実施、訓練実施、賃金支払い、支給申請・・・など、各制度には“いつまでに何をしておくか”が詳細に規定されています。特に令和7年度改正分では「雇入れ後6か月以上」「新卒者入社1年未満の正社員転換不可」など注意点があります。

6.予算・助成率の確認
 助成率・支給上限額・対象経費の範囲などがそれぞれ改定されています。例えば、第1柱では「助成率通常75%、賃金が低めの事業場では80%」など。第3柱でも「訓練のみ実施時の助成率が60%→70%」「賃上げ要件達成時は75%→85%」という改正があります。

まとめ:令和7年度は“制度をつなげる”視点がカギ

2025年度(令和7年度)において、3本の助成金制度はいずれも単独での活用も可能ですが、“連動させる”ことでより大きな効果が期待できます

  • 第1柱で「賃上げ+効率化」の仕組みをつくり、
  • 第2柱で「非正規から正規化+処遇改善」という賃上げの流れを確立し、
  • 第3柱で「人材育成→昇給・定着」を実現する。

このような順序・ストーリーを描いておくことで、社員の意識も変わり、賃金上昇が“仕組み”として根付く可能性が高まります。

 

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