
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップや能力開発を支援する厚生労働省管轄の助成金制度です。2025年度の制度改正により賃金助成額の拡充や申請手続きの簡素化が図られ、より多くの企業が活用しやすい制度となりました。本記事では、実務担当者の方が迷うことなく申請できるよう、手続きの流れと必要書類を詳しく解説します。
<申請前の準備事項>
助成金申請を行う前に、以下の準備が必要です。
1.職業能力開発推進者の選任
研修や人事の担当課長等を職業能力開発推進者として選任し、計画届提出日までに配置しておく必要があります。
2. 事業内職業能力開発計画の策定・周知
雇用する労働者への職業能力開発の方針を定めた計画を策定し、従業員に周知することが求められます。
3. 基本要件の確認
・雇用保険適用事業所の事業主であること
・対象労働者が雇用保険被保険者であること
・労働保険料の滞納がないこと
<申請手続きの全体フロー>
ステップ1:計画届の提出
提出期間
訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に提出する必要があります。
※従来の「1か月前まで」から期間が拡張されました。
提出方法
・電子申請-雇用関係助成金ポータル(推奨)
・郵送-管轄の都道府県労働局
・窓口持参-管轄の都道府県労働局
電子申請の場合、GビズIDプライム(法人代表者による本人確認が必要)の取得が事前に必要です。
24時間いつでも申請可能で、書類や郵送や窓口持参の手間が省けます。
ステップ2:訓練の実施
計画に沿って職業訓練を実施します。この段階で以下の記録・管理が重要です。
・出勤簿、タイムカードの適切な管理
・OFF-JT実施状況報告書の作成
・OJT実施日誌の記録(該当する場合)
ステップ3:支給申請書の提出
申請期間:訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に提出する必要があります。審査プロセス 2025年度改正により、計画届提出時の確認・受理行為は廃止され、助成金の支給・不支給に関する審査は支給申請時に一括して実施されるようになりました。
<計画届提出時の必要書類>
基本書類
1.職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
2.対象労働者一覧(様式第3-1号)
3.事前確認書(様式第11号)
訓練内容に関する書類
4.訓練カリキュラム(受講案内など)
5.見取り図・レイアウト図(自社での訓練実施時)
※通常の事業活動・営業活動と区切られている場所で訓練を実施することが分かるもの
6.OFF-JT講師要件確認書(様式第10号)
7.教育訓練機関との契約書・申込書(外部研修利用時)
特定コース向け書類
8.ジョブ・カード関連書類(有期実習型訓練)
9.OJTカリキュラム(認定実習併用職業訓練)
10.キャリアコンサルティング実施証明書
事業主団体・共同申請の場合
11.定款・規約・会員名簿
12.協定書(共同事業主)
<支給申請時の必要書類>
申請関連書類
1.支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
2.支払方法・受取人住所届(通帳の写し等の口座確認書類添付)
3.支給申請書(様式第4-1号)
4.事業所確認票(中小企業事業主の場合)
助成金額算定関連書類
5.賃金助成及びOJT実施助成の内訳(様式第5号)
6.経費助成の内訳(様式第6-1号)
訓練実施実績書類
7.OFF-JT実施状況報告書
8.eラーニング・通信制実施結果報告書(該当時)
9.OJT実施日誌
労働条件・賃金関連書類
10.雇用契約書、労働条件通知書の写し等
11.賃金台帳、給与明細
12.出勤簿、タイムカード
経費関連書類
13.入学料・受講料・教科書代等の請求書・領収書・振込通知書等
14.講師・指導者の出勤簿
その他の書類
15.支給申請承諾書(訓練実施者:様式第12号)
16.正規雇用労働者等への転換証明書類(有期実習型訓練で転換実施時)
<2025年度の重要な改正ポイント>
賃金助成額の拡充
- 人材育成訓練:800円/時間(改正前:760円)
- 認定実習併用職業訓練:800円/時間(改正前:760円)
- 賃上げ要件達成時:1,000円/時間(改正前:960円)
申請手続きの簡素化
- 共通様式の導入:人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースで共通様式を採用
- 自動計算機能:賃金助成・経費助成の内訳書類に自動計算機能を実装
- 添付書類の整理:重複書類の削減と明確化
有期契約労働者への支援強化
- 経費助成率の向上:有期契約労働者等への訓練実施時75%(改正前:60%)
- 正社員転換時:経費助成率100%(改正前:70%)
<申請時の注意点>
計画届段階での注意事項
- 訓練の職務関連性:対象労働者の職務に直接関連する訓練であることが必須
- 訓練時間数:10時間以上のOFF-JTまたはOFF-JTとOJTの組み合わせ
- 教育訓練機関の要件:計画提出日までに定款等で教育訓練事業が事業目的として記載されている法人であること
訓練実施段階での注意事項
- 出勤管理の徹底:訓練期間中の適切な賃金支払いと出勤記録の管理
- 進捗管理:eラーニングの場合、LMSでの進捗率や訓練終了日の記録
- 8割以上の受講:修了要件として訓練時間の8割以上受講が必要
支給申請段階での注意事項
- 経費負担の完了:支給申請日までに訓練経費を申請事業主が全額負担していること
- 教育訓練機関からの金銭受領禁止:訓練経費の返金や営業協力費等の受領は支給対象外
- 書類の整合性:計画届と実績の整合性確認
<よくある申請ミスとその対策>
書類不備によるミス
対策:提出前の書類チェックリストの活用と、記載例との照合確認
期限管理のミス
対策:訓練計画段階での申請スケジュール表の作成と、リマインダー設定
経費証明のミス
対策:請求書・領収書・振込証明書の三点セットでの経費実績証明
<電子申請の活用方法>
GビズID取得手順
- GビズIDプライム申請(法人代表者による本人確認必要)
- 厚生労働省電子申請システムへのアクセス
- 指定様式への入力と必要書類のPDF化・添付
電子申請のメリット
- 24時間受付:土日祝日関係なく申請可能
- 書類送付不要:郵送コストと時間の削減
- 入力支援機能:自動計算機能による計算ミスの防止
<審査から支給決定まで>
審査プロセス
労働局での書類審査には一定の時間を要します。不明な点がある場合は追加資料の提出を求められることがあります。
支給決定通知
審査完了後、支給決定または不支給決定の通知が送付されます。支給決定の場合、指定口座への振込が実行されます。
<まとめ>
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、2025年度の制度改正により利用しやすさが向上した一方で、適切な手続きと書類準備が支給の鍵となります。特に以下の点が重要です:
- 事前準備の徹底:職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定
- 計画的な申請スケジュール:訓練開始の6か月前から1か月前までの計画届提出
- 適切な記録管理:訓練実施中の出勤管理と進捗記録
- 確実な書類準備:支給申請時の必要書類の網羅的準備
- 電子申請の活用:GビズID取得による効率的な申請手続き
制度の詳細や最新情報については、
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html)で随時確認し、
不明な点は管轄労働局又は社会保険労務士法人KAWAKAMIにお問い合わせください。
適切な申請手続きにより、従業員の能力開発と企業の生産性向上を両立させる貴重な支援制度を最大限に活用しましょう。
・【人材開発支援助成金】について詳しくはこちらをご覧ください。
・どの助成金が受給できるかチェック→助成金チェックシート
・今すぐ助成金のご相談をご希望の方→お問い合わせ
大阪本町駅徒歩3分
年間500件超、受給総額40億円以上の助成金申請実績
【全国対応】社会保険労務士法人 KAWAKAMI
https://sharoushi-kawakami.biz/