はじめに
デジタル化やグリーン化の波が押し寄せる中、企業は新たな事業展開に向けた人材育成が急務となっています。そんな中、厚生労働省が提供する「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」は、令和4年度から開始された時限的な支援制度として注目を集めています。本記事では、厚生労働省の公式資料に基づき、この助成金の全貌を詳しく解説します。
制度の目的と背景
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、令和4年度から令和8年度までの期間限定制度です。新規事業への進出、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)など、企業の事業展開に伴う人材育成を支援することを目的としています。この助成金の特徴は、単なるスキルアップではなく、事業戦略と連動した計画的な人材育成を支援する点にあります。
助成対象となる訓練
本コースで助成対象となるのは、以下の事業展開等に伴う訓練です。
①新規事業の立ち上げに必要な訓練
②DX(デジタル化)推進のための訓練
③GX(グリーン化・脱炭素化)推進のための訓練
④その他の事業展開に伴う訓練
重要なのは、訓練開始の1ヶ月前から6ヶ月前までに「事業展開等実施計画」を作成し、労働局の確認を受ける必要があることです。
助成率と助成額:最大75%の高い支援率
訓練経費の助成
本コースの最大の魅力は、その高い助成率にあります。
・中小企業:訓練経費の75%
・大企業:訓練経費の60%
外部研修機関への受講料、教材費、講師謝金など、訓練に直接かかる経費が対象となります。
賃金助成
訓練時間中の賃金も助成対象です。令和7年4月1日の改正により、助成額が引き上げられました
・中小企業:1時間あたり1,000円(改正前:960円)
・大企業:1時間あたり500円(改正前:480円)
支給限度額(中小企業の場合)
訓練時間に応じて、1人あたりの上限額が設定されています。
・10時間以上100時間未満:30万円
・100時間以上200時間未満:40万円
・200時間以上:50万円
対象となる事業主の要件
以下の要件を満たす事業主が対象となります。
・雇用保険適用事業所であること
・事業展開等実施計画を作成し、労働局の確認を受けていること
・訓練実施計画届を提出し、適切に訓練を実施できること
・労働関係法令を遵守していること
対象となる労働者の要件
助成対象となる労働者は
・雇用保険被保険者であること
・正社員等への転換を予定している非正規雇用労働者
・訓練開始日に在籍していること
活用のメリット:なぜ今この助成金なのか
1.高い助成率による費用負担の大幅軽減
中小企業で75%、大企業でも60%という高い助成率は、他の助成金と比較しても非常に有利な水準です。100万円の研修費用であれば、中小企業で75万円が助成されます。
2.賃金助成による実質的な人件費サポート
訓練時間中の賃金助成により、従業員を業務から離して研修に参加させる際の人件費負担も軽減されます。
3.戦略的な人材育成の推進
事業展開等実施計画の作成プロセスを通じて、企業の事業戦略と人材育成戦略を連動させることができます。
4.期間限定の特別制度
令和8年度(2027年3月31日)までの時限措置であるため、この機会を逃すと今後同様の支援を受けられない可能性があります。
令和7年4月1日の制度改定ポイント
最近の改正により、制度がさらに使いやすくなりました。
1.賃金助成額の引き上げ
2.申請手続きの簡素化
3.審査の効率化
注意すべきポイント
計画的な準備が必要
訓練開始の1ヶ月前から6ヶ月前までに計画届を提出する必要があるため、余裕を持った準備が求められます。
時限措置であることの認識
令和8年度で終了する制度のため、早めの検討・活用が推奨されます。
事業展開との連動制
単なるスキルアップではなく、具体的な事業展開計画との連動が求められます。
まとめ
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、最大75%の高い助成率と賃金助成により、企業の事業展開に伴う人材育成を強力に後押しする制度です。DX・GXといった時代の要請に応え、新たな事業展開を目指す企業にとって、この助成金は人材育成投資のハードルを大きく下げる重要な支援策と言えるでしょう。
令和8年度までの期間限定制度であることを踏まえ、ぜひ早めの検討をお勧めします。
参考:(厚生労働省)人材開発支援助成金 総合ページ(令和7年度パンフ・様式一式)
・【人材開発支援助成金事業展開等リスキリング支援コース】について詳しくはこちらをご覧ください。
・どの助成金が受給できるかチェック→助成金チェックシート
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