キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、非正規雇用労働者の安定した雇用を促進するために設けられている制度であり、有期雇用労働者や無期雇用労働者、派遣労働者などを正社員へ転換した事業主に対して助成金が支給される仕組みです。制度の趣旨は、いわゆる非正規雇用の労働者のキャリアアップと雇用の安定を図ることにあります。厚生労働省が所管する雇用関係助成金の中でも利用件数の多い制度ですが、対象となる労働者には細かな要件が定められており、その一つが「新規学卒者の取扱い」です。
令和7年度(2025年4月)からの制度改正では、正社員化コースの支給額の見直しや重点支援対象者の整理とともに、新規学卒者の取扱いについても明確化されました。実務上は、この新規学卒者の取扱いを誤解しているケースが多く、申請時の不支給理由になることも少なくありません。そのため、制度の内容を正しく理解しておくことが重要です。
新規学卒者の定義
キャリアアップ助成金における新規学卒者とは、学校や専修学校、職業能力開発施設などを卒業予定の者で、卒業年度の3月31日までに内定を得て就職する者を指します。一般的にいわゆる「新卒採用」に該当する労働者がこの区分に当たります。
※新規学卒者は企業に就職した実績がなく、雇用保険加入もしくは労働契約の実績がない場合が該当。
※令和7年4月1日以降に内定を得た者は新規学卒者とはなりません。
通常の新卒採用では、卒業後すぐに正社員として雇用するケースが多いですが、企業によっては一定期間を有期雇用契約とし、その後正社員へ転換する制度を設けている場合があります。しかし、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者のキャリアアップを目的とする制度であるため、こうした新規学卒者の雇用については特別な扱いが定められています。
具体的には、新規学卒者として雇い入れられた労働者については、雇入れの日から1年を経過するまでに正社員へ転換した場合は助成金の支給対象とはなりません。例えば、2025年3月に学校を卒業し、同年4月1日に有期雇用として採用された新規学卒者を同年中に正社員へ転換したとしても、雇入れから1年を経過していないため助成金の対象外となります。
この規定は、新卒採用者を形式的に有期雇用とし、短期間で正社員へ転換することで助成金を受給することを防ぐ目的で設けられています。つまり、本来は正社員として採用されることが一般的な新卒人材について、制度の趣旨に反する形で助成金が利用されることを防止するための措置といえます。
令和7年度改正と新規学卒者の位置づけ
令和7年度の改正では、正社員化コースの助成額が見直されるとともに、「重点支援対象者」という区分が導入されました。この区分は、雇用の安定に特に支援が必要とされる労働者を対象とするもので、該当する場合は従来に近い助成額が支給される仕組みとなっています。
重点支援対象者には、長期の有期雇用労働者や正規雇用経験の少ない労働者、派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定訓練修了者などが含まれます。しかし、新規学卒者はこの重点支援対象者には含まれていません。この点も実務上重要なポイントです。重点支援対象者に該当する場合には助成額が高くなる可能性がありますが、新規学卒者はこの区分に該当しないため、支給額の加算などの対象にはなりません。また、雇入れから1年未満の段階で正社員転換を行った場合は、そもそも支給対象外となるため、制度を活用する際には転換のタイミングにも注意が必要です。
一方で、新規学卒者であっても、雇入れから1年以上経過した後に正社員へ転換した場合には、通常の有期雇用労働者と同様に助成対象となる可能性があります。つまり、制度上は完全に対象外というわけではなく、「雇入れから1年」という期間要件を満たすかどうかが大きな判断基準となります。
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、非正規雇用労働者の安定雇用を支援する重要な制度ですが、新規学卒者の取扱いについては特有のルールが設けられています。令和7年度改正では支給額の見直しや重点支援対象者の導入など制度全体が大きく変わったため、従来の感覚で運用すると誤解が生じやすい部分でもあります。
特に、新規学卒者については「雇入れから1年未満の正社員転換は助成対象外」であること、さらに「重点支援対象者には含まれない」という点を理解しておくことが重要です。助成金を活用する際には、採用区分や雇用契約の内容、正社員転換の時期などを事前に整理し、制度要件を満たしているかを確認した上で申請を進めることが求められます。
【参考資料】
・(厚生労働省)キャリアアップ助成金(制度概要)
・(厚生労働省)キャリアアップ助成金(正社員化コース)リーフレット
・(厚生労働省)キャリアアップ助成金 制度改正Q&A
・どの助成金が受給できるかチェック→助成金チェックシート
・今すぐ助成金のご相談をご希望の方→お問い合わせ
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