はじめに
前回の記事では、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の制度概要をご紹介しました。本記事では、実際に申請を検討されている実務担当者向けに、申請手順、必要書類、タイムライン、そして成功のポイントを詳しく解説します。
申請から受給までの全体フロー
助成金受給までの流れは、大きく分けて4つのステップがあります。
ステップ1:事業展開等実施計画の作成・提出
タイミング:訓練開始日の1か月前から6か月前まで
最初のステップは、「事業展開等実施計画」の作成です。この計画書では
・企業が目指す事業展開の内容(DX、GX、新規事業等)
・事業展開に必要な人材育成の方針
・訓練の具体的な内容と期間
・訓練対象者の選定理由
これらを明確に記述し、都道府県労働局へ提出します。
<重要ポイント>
令和7年4月の改正により、計画段階での審査が簡素化され、詳細な審査は支給申請段階に移行しました。これにより、計画確認がスピーディーになっています。
ステップ2:訓練実施計画届の提出
タイミング:訓練開始日の1か月前まで
事業展開等実施計画の確認を受けた後、具体的な訓練の実施計画を提出します。
この段階で提出する主な書類
・訓練実施計画届
・訓練カリキュラム
・訓練経費の見積書
・対象労働者のリスト
ステップ3:訓練の実施
計画に基づいて訓練を実施します。
実施中の注意点
・訓練の出席記録を正確に保管
・訓練経費の領収書を確実に保管
・賃金台帳等、賃金支払いの証拠書類を整備
・訓練内容が計画と一致しているか確認
訓練実施中は、労働局から実地調査が入る可能性もあります。常に適切な記録管理を心がけましょう。
ステップ4:支給申請
タイミング:訓練終了日の翌日から2か月以内
訓練終了後、速やかに支給申請を行います。
提出書類
・支給申請書
・訓練実施結果報告書
・経費支出の証拠書類(領収書、振込記録等)
・賃金支払いの証拠書類(賃金台帳、出勤簿等)
・訓練実施の証拠書類(受講記録、修了証等)
申請期限を厳守することが重要です。2か月を過ぎると支給を受けられなくなります。
助成対象となる経費の詳細
<助成対象となる経費の詳細>
以下の経費が助成対象となります。
1.外部研修機関への受講料
2.教材費(訓練に直接使用するもの)
3.講師謝金(外部講師を招聘する場合)
4.講師旅費(外部講師の交通費・宿泊費)
5.施設使用料(外部施設を借りる場合)
<対象とならない経費>
以下は助成対象外です。
・訓練生の交通費・宿泊費
・一般的な設備、備品の購入費
・通常業務と区別できない経費
実務上の重要ポイント
ポイント1:計画作成は余裕を持って
訓練開始の6か月前から準備開始することをお勧めします。事業展開の方向性、必要な人材像、適切な訓練内容の選定には、十分な検討時間が必要です。
ポイント2:事業展開との明確な連動性
審査で最も重視されるのは、「訓練が事業展開にどう結びつくか」という点です。
成功する計画書のポイント
・事業環境の変化を具体的に説明
・なぜDX・GX等の事業展開が必要かを明確化
・訓練により従業員が習得するスキルを具体化
・習得したスキルが事業展開にどう活かされるかを説明
抽象的な記述ではなく、具体的なストーリーを描くことが重要です。
ポイント3:訓練の質と実効性
助成金目当ての形だけの訓練は認められません。
・訓練時間は最低でも10時間以上必要
・OFF-JT(業務外訓練)として明確に区分
・訓練内容は体系的で実効性のあるもの
・修了評価の仕組みがあること
ポイント4:正確な記録管理
支給申請時に最も重要なのは、正確な証拠書類です。
訓練実施の記録
・日付、時間、場所を明記した出席記録
・訓練内容の記録(レポート、写真等)
・講師の署名入り実施記録
経費の記録
・領収書(宛名、日付、金額、内容が明記)
・振込記録(銀行の取引明細)
・契約書(外部機関との契約の場合)
賃金の記録
・賃金台帳(訓練時間分が区分可能)
・出勤簿またはタイムカード
・賃金の振込記録
ポイント5:期限管理の徹底
助成金申請における期限は絶対です。
・訓練開始1か月前までの計画届提出
・訓練終了後2か月以内の支給申請
カレンダーにマークし、リマインダーを設定するなど、確実な期限管理を行いましょう。
成功のための実践的アドバイス
社会保険労務士等の専門家活用
初めての申請や複雑なケースでは、助成金に精通した社会保険労務士に依頼することも有効です。申請手続きの代行だけでなく、計画策定段階からのサポートを受けられます。
2.段階的な訓練実施
大規模な訓練を一度に行うよりも、まずは小規模でスタートし、経験を積んでから拡大する方がリスクが低くなります。
3.社内体制の整備
担当者1人に任せるのではなく、人事部門、経理部門、事業部門が連携する体制を作ることで、スムーズな申請が可能になります。
まとめ
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の申請成功には
1.計画段階での十分な検討:事業展開と訓練の明確な連動性
2.正確な記録管理:訓練実施中の証拠書類の確実な保管
3.期限の厳守:計画届・支給申請の期限管理
4.事前相談の活用:労働局や専門家への相談
これらのポイントを押さえることで、最大75%の高い助成率を活かし、企業の事業展開と人材育成を同時に推進することができます。
DX・GX時代の人材育成投資を、この助成金で加速させましょう。
参考:(厚生労働省)詳細版パンフレット「令和7年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和7年4月1日版)」
・【人材開発支援助成金事業展開等リスキリング支援コース】について詳しくはこちらをご覧ください。
・どの助成金が受給できるかチェック→助成金チェックシート
・今すぐ助成金のご相談をご希望の方→お問い合わせ
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